誘導しない、代行しない。可能性を狭めない伴走を
地域おこし協力隊を募集するとき、私たちは「100人に届く」ことを目指していません。たった一人でも、「これは私のことだ」と思ってくれる人に出会えたらいい。人口3700人ほどの町だからこそ、一人が持つ経験や思いが、町に与える影響は決して小さくないからです。
そして、来てくれた人をこちらの思う方向へ導くこともしません。私たちコーディネーターが大切にしているのは、誘導しない、代行しないこと。本人がやりたいことと、町や事業者が必要としていること。その間に立って、人をつないだり、使える資源を一緒に探したりはする。でも、答えまでこちらが出してしまえば、その人が持っていた可能性を狭めてしまう。だから、できるだけ本人の手に委ねます。
同じように、任期を終えたあと、この町に住み続けることだけが成果だとも考えていません。人生には、家族の事情もあれば、予期せぬ出来事もある。人の人生は、誰かに引き継ぐことができません。でも、プロジェクトなら引き継ぐことができる。その人が始めたことが町の資産になり、次の誰かへ渡っていく。それも、私たちが目指している地域おこしのかたちです。
黒川温泉の入湯手形も、そのひとつ。一度は「マニュアルをつくって終わろう」という話になりかけたところから、やり方を探し直し、機械を導入し、関わる人が増え、事業そのものが次へ受け継がれていった。40周年を迎えるとき、黒川温泉側から「次の50年につなげるための40周年」ということばが出たとき、「ああ、こういうことなんだ」と思いました。
南小国には、遠い未来を見ながら、目の前の暮らしや仕事をどう続けていくかも同時に考えている人がたくさんいます。昔からあるものをただ守るのではなく、残していくために、変えていく。そんな人たちの営みのなかに、新しくこの町に来た人の思いや力が重なって、また次の景色がつくられていく。私たちは、その間をつなぐ存在でありたいと思っています。